「脳科学の倫理を考える対話セッション」というイベントに行ってきましたという話と、若干のテクノロジーについての考察
昨日、「脳科学の倫理を考える対話セッション: 脳科学技術が変えるリハビリ~2040年、いかに老いるべきか?」というイベントに行ってきました。
UTCPのサイトを見て行ったので、てっきりUTCPのイベントだと思っていたら、このレポを書くにあたり確認したところ、
「東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野」が主催とのことでした。紹介ページは、http://cbel.jp/?page_id=1475dです。
なお、私がよくチェックするUTCPのUTはユニバーシティオブトウキョウで、よくわかりませんが、東大の中の組織のようです。
だいたい東大の駒場キャンパスでやっているようで、色々なイベントがありますが、時々、哲学対話っぽいイベントをやってるので要チェックです。
無料だし、東大で話を聞くなんて、少しカッコよくなった気分がするのでおすすめですよ。
ということで、うきうきと電車に乗り、駒場東大前に着く直前に、なんと今回は本郷キャンパスということに気付きました。なんだと!
更に、本郷キャンパスのなかで15分くらい迷って、45分遅刻。。。
おかげで話題提供者のお話しが30分しか聞けなかった・・・悲しい・・・
話題提供者は、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の研究者で、最先端の研究状況をわかりやすく説明してくれました。
(半分も聞けてないので、「多分」ですが・・・)
この方がやってるのはBMIと言っても、リハビリの一環で一時的に使用するもので、最終的には機械は全て取り外すということでした。
どうしても、脳にチップを埋め込んで・・・とかっていうSFっぽいのをイメージしちゃいますが、こういう優しい技術もあるんだなあ・・・
そして、後半は対話をしました。
手順は、
1 全員で付箋に話したいテーマを出して、
2 テーマを3つに絞って、
3 テーマごとのグループで6~7人くらいで40分くらい話して、
4 全体で40分くらい話す、
という流れでした。
スタッフの方も含めて、20数人の参加者だったのかな?こんな面白いんだからもっと来ればいいのに。
今回は、僕自身、対話というより、純粋にBMIへの興味から参加したのですが、
たまたま、僕のグループに話題提供者の方も入ったので、研究者がどのように考えているのか、というところも垣間見えて面白かったです。
そして思ったことのメモ。
やはり、テクノロジーというのは、BMIであれなんであれ、それを使って幸せになるからこそカッコよくて意義があるんだろうなあ。
最終的には、やはり、その技術を使って、人間がどう生きるかなんだろうなあ。
というのが、とっても深く感じたことです。こういう深い洞察は期待していなかったので大きな収穫でした。
あと、BMI特有の話としては、特に目とか舌とかといった感覚器を機械に置き換える場合、
それが、生身と同じ感覚だということをどのように担保するのか、特に、新しい体験をしたり、成長したり、といったことをどのように実現できるのか、
というところに大きな疑問が残りました。
例えば人工舌の動作確認は、納豆ご飯を食べたとき、過去に食べた納豆ご飯と同じ味を感じたかどうかで確認するしかないと思うけれど、
将来、いつか3個79円の納豆ではなく、1個500円のスペシャル手作り納豆を食べたとき、そのように調整した人工舌はうまく機能してくれるのだろうか、という疑問です。
機械は、生身の肉体の機能のうち、既知の機能しか代替できないとするなら、そこに機械の限界があるように思えるのです。
あと、ちょっとメタ的だけど、もう一つ感想。
進行役の方も少し言っていたと思うけれど、まさに、こういう話をすることこそ、科学技術について対話をすることの意義なのだろう。
それも、今回のような、素人と研究者の対話においては、特に研究者の側にとって、大きな意義がある。
研究者が、素人から、その技術にどのような意義を見出し、どのような疑問、不安を感じるのか、といった話を聞くことは、研究者が、研究者の道を歩むことを決めた頃の出発点を確認することなのではないか。
そして、その出発点で、対話により進むべき方向を整えることによってこそ、正しい科学技術が可能になる。その科学技術が正しいものとなるかどうかは、研究者という人間の思いにこそかかっている。
そんなことを考えました。
(素人の側にとっても、対話を通じて研究者の生の思いを聞くことで、その技術に対する不安が軽減するというような効用は当然あると思うけど。)
行ったことはないけど、サイエンス・カフェってこういうのかも。